設立趣旨

 今日、世界的な環境変化の中で、将来の予測は長期的に安定なものでは、なくなってきている。われわれは、不確実で見通すことができない未来を受け入れながら、生き抜いていくことになる。しかし、不確実性とは、けっして否定的にのみ捉えるべきものではないだろう。むしろ、個人が、それぞれの主体性に基づき、多様な人生を歩む可能性が拡大したのだと捉えることもできよう。

 同時に、わが国においては、政府の政策として地方創生が重要課題として示されている。急激な少子高齢化は人口減少を招き、地方から大都市圏への人口流出とあいまって、地域社会・経済の持続可能性が問われている。そのために、地域における安定的な雇用の創出が重要なことはもちろんであるが、その基盤として、われわれが重視することは人材育成である。いかに雇用が創出されようとも、雇用を担うのは人であり、人の成長なくして、地域活性化は実現し得ないであろう。

 将来予測が難しい不確実な環境においても、個人が主体的に多様な人生を歩み、地域を担う人材として成長する。われわれは。この難しい課題を実現する基盤こそ、キャリア・ディベロップメント(キャリア開発)であると考える。キャリア開発は、一見、地域活性化にとって縁遠い考え方かもしれない。地域の限定的な雇用機会のなかでは、選択できるキャリアの機会も限られ、主体的な選択は望めないという考え方も存在するからだ。

 しかし、われわれは、キャリアを職業上の選択、マッチング、昇進などの意味であると狭く捉えているわけではない。われわれはキャリアを、「ライフ(人生)とワーク(仕事)を統合した領域における、生涯にわたって成長していくプロセス」であると考える。そのように考えれば、キャリア開発とは、地域においてどのように成長しながら生き抜いていくか、ということに他ならない。また、ワーク(仕事)という概念も多様である。ワーク(仕事)とは、単に雇用には限定されない。昨今、地域では、ナリワイや小商いという言葉に示されるような、地域ならではの自営の新しい概念も勃興しつつある。またNPOやコミュニティビジネスなどの社会活動なども、ワーク(仕事)と位置づけられる。雇用されない柔軟な働き方が、ワーク(仕事)において大きな位置づけを占めつつある。

 以上から、われわれは地域活性化における難しい課題を解決するためのキャリア開発に取り組んでいくために、本団体を設立する。われわれが対象とする地域は新潟県である。新潟県は、広大な県土を有し、海岸線、平野、山岳部、島など多様な地勢に恵まれている。わが国有数の農業県であるとともに、日本海側随一の工業集積県でもある。人づくりについては、米百俵の逸話に代表されるように、熱心に取り組んできた歴史があり、多様な人材を輩出してきた。

 われわれは、このように、美しい自然と活力ある人・産業を有する新潟県のさらなる活性化のために、新潟県におけるキャリア開発を推進していくことを最大の目標に定める。われわれは、何らかの形で新潟県に縁があり、新潟県を愛するという点において、共通している有志の集まりである。具体的な活動は、主として以下のとおりとなる。

・新潟県における多様なキャリアの実態を、キャリアイベントなどを通して顕在化することで、キャリア開発の考え方を学びあう機会を創出する。

・新潟県におけるキャリア開発を通じた人材育成のモデル構築に貢献する。

・UIJターンなど、他地域と連携したキャリア開発を活性化することに貢献する。

 新潟県内外の、産官学などの広範な分野から、志を同じくする人々の本活動への参画を今後とも募っていきたい。

発起人

会長 小杉俊哉 合同会社THS経営組織研究所代表社員 / 慶應義塾大学大学院 理工学研究科特任教授

副会長 石山恒貴 法政大学大学院 政策創造研究科 教授

理事 塗茂克也  新潟経営大学 経営情報学部  経営情報学科准教授

理事 杉浦二郎 株式会社モザイクワーク代表取締役社長

理事 田中典子 東京都公立中学校スクールカウンセラー

理事 中藤美智子 グローリンク株式会社 代表取締役

理事 たかはしじゅんいち フォトグラファー

理事・事務局長 金澤元紀 一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員

監事 宮内正臣 株式会社時空工房 代表取締役社長